自社開発のAIエンジニアリングエンジン2種 — AETHER(形状探索・最適化)とMorpheus(AI生成形状のCAD復元) — を実際のハードウェア開発プロジェクトに投入し、実証を開始しました。
実験室のベンチマークではなく、実際に作られ、水に入れられる製品の設計にエンジンを直接使っています。何ができ、どこまで支援できるかを正直に共有します。
何を解いているか
今回の舞台は水上環境で微細な振動を検知するセンサー機器です。問いは単純ですが難しい。
「どの形状が、小さな水面振動を最もよく検知しつつ、安定して浮いていられるか?」
ここには本質的な緊張があります。敏感にすると不安定になり、安定させると鈍感になる。一つの形状でこの両方を満たす必要があります。人の直感だけでは数百の候補を検討できません。そこにAETHERが入ります。
AETHER — 数千の形状を探索し、絞り込む
AETHERは設計変数(直径・高さ・質量配分・形状種別など)を変えながら、数千の形状候補を自動生成し、物理基準で順位付けします。浮力・重心・復原安定性を候補ごとに計算して沈む・転覆する形状を除外し、複数の形状系統を同じ尺度で比較し、人が見落としやすいトレードオフを定量的に示します。数百〜数千の候補を数分で絞り、エンジニアが集中すべき有力候補を提示します。
実証の本当の価値 — 検証ループが回る
実開発で使うと、統制実験では見えないものが現れます。私たちはそれを隠さず、エンジンをより精密にする原動力とします。今回、形状評価指標を精緻化すべき点を発見し、検知性能指標をより物理的に正確な定義(入力に対する応答伝達率)へ再定義し、形状の非線形特性を反映し、安定性と感度を独立した二軸に分離しました。修正後、回帰テストはすべて通過。発見・高度化・再検証が一つのサイクルとして回ります。AETHERが特に強いのは、幾何・静力学(浮力・重心・安定性・質量配分)のように物理法則が明確な領域で、独立した手計算と正確に一致します。
Morpheus — AI生成形状を「使える設計」へ
AETHERの探索結果はメッシュ(表面データ)です。製造には編集可能なCADモデルが必要で、ここにMorpheusが入ります。Morpheusは生成形状を検証可能なCAD(STEP)に復元します。平面・円筒など定形幾何はほぼ誤差なく復元、有機的曲面を含む形状もCAD変換に成功し、曲面精度は現在さらに高度化中です。「AIが形状を生成 → 検証可能なCADへ復元」の流れが一度完結し、AI生成設計が実製造へつながる橋を得ました。
結び
私たちは「AIが最適設計を勝手に出す」とは言いません。実際のハードウェアはそう作られないからです。AIが膨大な可能性を素早く絞り、検証が確定し、実証での発見が再びエンジンを精密にする閉じた改善ループ — それをAETHERとMorpheusは今、実製品の上で回しています。一緒に解きたい設計課題があればご連絡ください。
本稿は進行中の実証の経過共有であり、具体的なプロジェクト・顧客情報は含みません。
